本記事では、オフサイトPPAの仕組みや種類、メリット・デメリットを解説します。さらに、導入の際に活用できる補助金や実際の進め方も紹介します。オフサイトPPAについて知りたい方や、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
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オフサイトPPAとは丨基本概念の整理
オフサイトPPAは、需要家の敷地外に発電所を設置し、PPA事業者がそこで発電した電気を一般送配電事業者を介して、需要家に電気を調達する仕組みです。
そもそもPPAとは
PPAとは「Power Purchase Agreement(パワー・パーチェス・アグリーメント)」の略で、日本語では「電力購入契約」と呼ばれています。一般的には「PPAモデル」として知られています。
この仕組みでは、電気を使う企業などの需要家が、自分たちで発電所を選び、直接電気を購入できます。とくに再生可能エネルギーを安定して手に入れられるため、近年ますます注目を集めています。
コーポレートPPAとは
コーポレートPPAとは、企業や自治体が太陽光や風力といった再生可能エネルギーをつくるPPA事業者と長期契約を結び、電力を直接購入する仕組みです。契約期間は10年〜25年と長く、自社で発電設備を持たずともクリーンな電気を安定して利用できるのがメリットです。
コーポレートPPAは、発電所の設置場所によって、オンサイトPPAとオフサイトPPAの2タイプに分けられます。オンサイトPPAとは、PPA事業者が企業や工場の敷地内に設置し、発電した電気を直接利用する仕組みです。
オフサイトPPAとは
自社の敷地外にある大規模な発電所でつくられた電気を、送電線を通じて受け取る仕組みです。オンサイトPPAは敷地内に発電設備を設置するため、都市部のビルなどの限られたスペースでは設置場所を確保できない場合も珍しくありません。
その点、オフサイトPPAは郊外や水上など広い場所に建てた大規模な発電所を使えるため、スペースの制約がなく、大量のクリーンエネルギーを安定して確保できるのが強みです。
こうした広大なスペースを有効活用する手段のひとつが「水上太陽光発電」です。シエル・テール・ジャパンは、日本で唯一大型パネルに対応する水上架台フロート開発に成功した水上太陽光発電の架台フロートメーカーです。大型パネルを設置することで、設置スペースを大幅に増やすことなく発電量の増大を見込めます。ぜひ弊社へお問合せください。
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オフサイトPPAの導入が拡大する背景
オフサイトPPAの導入が広がっている背景には、以下の3つの社会的・制度的な変化が関係しています。
電気料金の高騰
燃料価格の上昇や国際情勢の影響で、電気代が高騰しています。従来、オフサイトPPAの電気は割高といった印象が広まっていました。
しかし、近年は市場の電気代の上昇にともない、その差はほとんどなくなってきました。また、オフサイトPPAの電気料金は燃料価格の変動によらず一定なため、電気コストを安定化できる仕組みとしても注目されています。
CO2排出量削減の必要性
カーボンニュートラルの動きが進むなか、企業にもCO2排出削減の取り組みがますます求められるようになりました。多くの企業が再生可能エネルギーを取り入れ、環境負荷の軽減に取り組んでいます。しかし、自社で太陽光発電設備を設置するには、初期費用や設置場所の確保、管理の手間などの課題が生じます。
そこで注目されているのが、オフサイトPPAです。オフサイトPPAは、大規模な再生可能エネルギーを発電所から電力を調達するため、初期費用や設備メンテナンスが不要です。そのため、手軽に脱炭素を進められる方法として、導入が広がりつつあります。
シエル・テール・ジャパンは、持続可能な世界のために、水上太陽光を世界中で不可欠なエネルギー源にすることを目指しています。水上太陽光発電をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
自己託送の要件厳格化&新規受付停止
従来、自己託送により再生可能エネルギーが調達されていました。自己託送とオフサイトPPAは、遠くの発電所の電気を利用し、送電線の利用料金を要する点が共通します。
しかし、2024年2月12日の自己託送に係る指針の改正により、要件が複雑化し、新規の申し込みがほぼ受け付けられなくなりました。法改正の背景を受け、自己託送に代替する新たな調達手段としてオフサイトPPAの期待が高まっています。
オフサイトPPAとオンサイトPPA・自己託送の違い
再生可能エネルギーを取り入れる方法としてオフサイトPPAが注目されていますが、似た仕組みとして「オンサイトPPA」や「自己託送」もあります。これらは一見似ていますが、設備の設置場所や発電所の所有者がそれぞれ異なります。
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オフサイトPPAとオンサイトPPAの違い
オンサイトPPAは、需要家の屋根や敷地内にPPA事業者が発電設備を設置し、その場で発電した電気を直接使う仕組みです。初期費用がかからず、送電網を使わないため送電料金も発生しませんが、設置スペースが必要です。
一方、オフサイトPPAには、間接型と直接型の2種類があります。
- 間接型:小売電気事業者を介するため、送電料金や再生可能エネルギーの賦課金が必要となる。
- 直接型:PPA事業者と需要家が直接契約し、小売電気事業者を介さないため、手数料や賦課金が不要。ただし、契約や費用分担のために組合などの仕組みをつくる必要がある。
どちらも遠くの発電所から送電網を通じて電気を受け取り、複数拠点への供給や大規模な発電が可能です。発電所の設置はPPA事業者が行うため、初期費用はかかりません。
どちらを選ぶ?
オンサイトPPAが適しているケースは、以下のとおりです。
- 屋根や敷地に十分なスペースがある
- 1拠点で比較的小規模な再生可能エネルギーを導入したい
- 非常用電源を利用したい
一方、以下のケースではオフサイトPPAが向いています。
- 大規模な再生可能エネルギー導入を目指したい
- CO2を大幅に削減したい
- 設置スペースに制約がある
オフサイトPPAの導入の際は、複雑な契約に対応できる体制の整備が必要です。
オフサイトPPAと自己託送の違い
自己託送は、自社やグループ会社が持つ発電所でつくった電気を、離れた自社拠点に送る仕組みです。送電は電力会社の送配電網を使用し、小売電気会社を介さないため手数料や再生可能エネルギー賦課金がかかりません。
しかし、発電設備の建設・保有のための初期投資がかかり、送電料金も必要です。電力の使用管理も自社で実施する必要があります。
一方、オフサイトPPAは第三者が発電設備を持つため、膨大な初期投資をせずとも電力を購入できます。
どちらを選ぶ?
自己託送に向いているケースは、以下のとおりです。
- 自社で発電所を持ち運営したい
- 資金に初期投資の余裕がある
- 電力予測や使用管理ができる
一方、オフサイトPPAに向いているケースは、以下のとおりです。
- 初期投資を抑えたい
- 複数拠点で再生可能エネルギーを使いたい
- 発電所は持たずに再生可能エネルギーを利用したい
- PPA事業者と直接契約できる信頼関係がある
とくにオフサイトPPAは、電力コストの削減を重視する需要家に向いています。
なかでも、オフサイトPPAで注目を集めているのが水上太陽光発電です。これは、ダム湖やため池などの水面に太陽光パネルを浮かべて設置する発電方法で、地上に広大な土地を確保する必要がありません。
こちらの記事では、 水上太陽光発電について解説しています。
メリット・デメリットや設置する際のポイントも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
オフサイトPPAのメリット6つ
オフサイトPPAは、自社で発電設備を持たなくても、再生可能エネルギー発電所から電気を購入できる仕組みです。電気代の節約やCO2削減など、コストと環境の両面でメリットがあります。ここでは、オフサイトPPAの主な6つのメリットを紹介します。
初期費用がかからない
太陽光発電設備の建設や設置をPPA事業者が行うため、需要家は初期費用をかけずに再生可能エネルギーを導入できます。
しかし、オフサイトPPAでは電力や環境価値を購入するだけで導入可能です。大きな投資が不要なため、コスト面に不安がある需要家でも導入しやすいのがメリットです。
メンテナンスが不要
PPA事業者が、発電設備の点検・修理・清掃などのメンテナンスをすべて行います。そのため、需要家側に管理の手間やメンテナンスコストがかかりません。発電設備を管理・運用する専門人材の手配も不要です。
設計や施工の高い技術を持つシエル・テール・ジャパンでは、運用管理(O&M)のサービスも提供しております。パネルの汚れや破損を最小限に抑えるために定期的なメンテナンスを実施しており、安心してお任せいただけます。
敷地内に発電所を設置できない企業も導入できる
オフサイトPPAの場合、自社の屋根や敷地に太陽光パネルを設置できない需要家でも再生可能エネルギーを導入できます。発電所はPPA事業者が別の場所に建設し、電力を送ってくれるため、都市部のオフィスビルやスペースの限られた工場、テナントビルでも導入が可能です。
電気料金変動のリスクヘッジができる
石油やガス価格の変動による電気代の高騰は、需要家の経費や予算に大きな影響を与える可能性があります。その点、オフサイトPPAは再生可能エネルギー電力を長期・固定価格で調達できるため、電気代の変動リスクを抑え、安定した予算管理が可能になります。
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複数の施設へ送電できる
オフサイトPPAでは、ひとつの太陽光発電所でつくった電気を、電力網を通じて複数の拠点に供給できます。各地の支店や工場に個別で設備を設ける必要がなく、設置スペースの確保が不要なほか、従業員の管理負担を軽減できます。
温室効果ガス削減に貢献できる
従来のグリーン電力証書を購入する方法では、環境への貢献が見えにくく、実効性が評価しにくいという課題がありました。
一方、オフサイトPPAは、特定の再生可能エネルギー発電所から電力を調達していることが明確に示せるため、ESGやサステナビリティ報告での信頼性が高まります。オフサイトPPAの利用により、環境へ配慮する企業として社会的な評価が上がり、投資家からの支持にもつながります。
オフサイトPPAのデメリット5つ
オフサイトPPAは初期費用ゼロで再生可能エネルギーを導入できる一方で、すべての需要家にとって最適な選択とは限りません。ここでは、導入前に知っておきたい5つの注意点を紹介します。
15~20年の長期契約が必要になる
オフサイトPPAは、発電設備の建設費を事業者が負担する代わりに、15年〜20年の長期契約が必要です。契約途中の解約は難しく、違約金が発生する場合もあります。また、契約中に電気代が下がっても価格変更はできません。
そのため、導入前に、自社の将来計画と契約期間のバランスを検討することが重要です。
そもそもの契約が難しい
オフサイトPPAは、15年〜20年の長期契約で多額の設備投資費用を回収するビジネスモデルゆえに、契約にたどり着くまでが難しい傾向にあります。PPA事業者は、長期間にわたって電気を買い続けられる安定した事業者と契約を結ぶためです。
少しでも事業の継続性に不安がある場合は、契約に至らない場合があります。
再生可能エネルギー賦課金・託送料金・インバランス料金がかかる
オフサイトPPAは遠くの発電所から送電網を通じて電気を供給するため、通常の電力契約ではかからない費用を負担する必要があります。主な追加費用は、以下のとおりです。
- 再生可能エネルギー賦課金:FIT制度下の再生可能エネルギー発電所支援のための費用
- 託送料金:発電所から施設まで電気を送る送電網の利用料
- インバランス料金:使用量の予測と実際の差に対する調整費用
インバランス料金に関しては、通常PPA事業者が負担しますが、料金に上乗せされることもあります。
一般の電気料金の方が安くなる可能性もある
オフサイトPPAは、固定料金での契約が一般的です。そのため、将来的に市場の電気料金が下がると、PPAの料金が割高になるリスクがあります。
また「バーチャルPPA」は、発電コスト自体は安価ですが、託送料金や仲介する電力会社の手数料が加算され、結果的に高コストになる傾向があります。
導入する際は、総合的な電気料金が一般的な電力購入よりも高くなる可能性を考慮しましょう。
非常用電源としては活用しにくい
オフサイトPPAの電気は送電網を通じて届くため、災害などで電力網が止まると電気が使えなくなります。また、自社の敷地に発電設備や蓄電池がないため、非常時の予備電源としては期待できません。
災害対策を重視する場合は、自家発電設備や蓄電池を別に用意する必要があります。
オフサイトPPAは2種類ある
オフサイトPPAは「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」の2種類に細分化されます。契約の仕組みやメリット・デメリットが異なるため、それぞれの特徴を以下で押さえておきましょう。
フィジカルPPAとは
フィジカルPPAとは、需要家が再生可能エネルギーの電気とその環境価値をセットで購入する契約です。購入する際の流れは、以下のとおりです。
1. 契約を結ぶ
PPA事業者と契約し、固定価格で15年〜20年の長期間契約を結びます。
2. 電気と環境価値が届く
発電所でつくられた再生可能エネルギーの電気が送電線を通じて需要家に届きます。同時に、この電気は自然エネルギーでつくられたことを証明する環境価値(CO2削減を示す証明書)も受け取ります。
3. 電気代を支払う
使用した電気代を小売電気事業者に支払い、そこからPPA事業者に送金します。
バーチャルPPAとは
バーチャルPPAとは、需要家が再生可能エネルギーの電気を直接使わず「環境価値」だけを購入する契約です。需要家はPPA事業者と15年〜20年の長期契約を結び、環境に優しい取り組みへの支援を証明できる環境価値を受け取ります。
需要家は環境価値を通じて再生可能エネルギーを支援し、CO2削減に貢献していることを、ESG評価やサステナビリティ報告でアピール可能です。
また、実際の電気は通常通り電力会社から供給されます。つまり、電気を使わずに、環境価値だけを取引するのがバーチャルPPAです。
バーチャルPPAの仕組み
バーチャルPPAでは、需要家が発電所と長期契約を結び、電気の取引ではなく、環境価値と価格差の精算(差額決済)で再生可能エネルギーを支援する仕組みです。利用する際の流れは、以下のとおりです。
1.発電所と長期契約を結ぶ
需要家は再生可能エネルギー発電所と固定価格での長期契約を結びます。
2.発電所が電力市場で電気を販売
発電所は電気を電力市場に売り、需要家には電気が届きません。代わりに、市場価格と契約価格の差額を精算します。
3.差額決済を行う
市場価格が契約価格より高ければ需要家が差額を受け取り、安ければ差額を支払います。企業は直接電気を使用せずに、再生可能エネルギー支援に参加できます。ただし、小売電気事業者が間に入る場合は、発電された電気は需要家に届けられ、差額決済は電気事業者が代わりに行います。
4.環境価値(再生可能エネルギー証書)を受け取る
需要家は、電気が自然エネルギーでつくられたことを示す証明書を受け取ります。
バーチャルPPAのメリット
バーチャルPPAは固定価格制なため、電気料金の急な上昇に伴うコストの増加を防げます。また、現在の電力会社との契約は変わらず、新しい契約手続きも不要なため導入が簡単です。
さらに、環境価値を取引するため発電所の場所に縛られず、遠方の再生可能エネルギー発電所とも契約できます。
バーチャルPPAのデメリット
バーチャルPPAは契約価格が高めに設定されることが多く、通常の電力より割高になる可能性があります。将来の市場価格の変動を予測しにくいため、損失を避ける目的であらかじめ高めの価格が設定されるためです。
また、差額決済の仕組みを使うため、小売電気事業者を挟まない場合は複雑な会計処理が必要です。
オフサイトPPAの補助金
オフサイトPPAを導入する需要家は、国や自治体による補助金制度が活用できます。
なかでも代表的なのが、資源エネルギー庁が実施する「需要家主導型太陽光発電導入支援事業 」です。この制度では、需要家がPPA事業者と連携して、太陽光発電設備や蓄電池を新設し、長期間にわたり再エネを利用する契約を結ぶ場合、導入にかかる費用の一部を補助してもらえます。
ただし、現在(2025年6月時点)の公募が終了しており、次回の募集については未定です。導入を検討している場合は、最新情報をJPEA太陽光発電推進センターの公式発表で随時確認することをおすすめします。
オフサイトPPA導入の流れ
オフサイトPPAは、再生可能エネルギーを上手に活用して電気代の安定や環境への負担軽減を目指す需要家におすすめの方法です。ここでは、導入の基本的な流れをわかりやすく説明します。
1:計画立案
オフサイトPPAを導入する際は、まず導入理由を明確にすることが大切です。たとえば「電気代の安定化や削減を図りたい」「再生可能エネルギー利用でCO2排出量を削減し、環境配慮をアピールしたい」などです。目的が明確に定めることで、どのようなPPAが自社に合うかが見えてきます。
2:PPA事業者の選定と契約
計画立案後、PPA事業者を選びます。とくにオフサイトPPAは仕組みが複雑なため、実績豊富で信頼できる事業者を選ぶことが大切です。
また、受電場所(工場やオフィス)や契約期間を決めましょう。ほかに、契約する電力量や電気料金、手数料の設定も契約に必要な手続きです。
3:送電網の利用手続き
発電した電気を自社の工場やオフィスに届けるには、送電網の利用手続きが必要です。送電に使う電線の確保や、託送料金を決めましょう。
4:オフサイトPPA運用開始
準備や手続きが整うと、発電所の運転が始まり、再生可能エネルギーの供給がスタートします。契約した電力量が自社の拠点に安定して届くようになります。
まとめ
オフサイトPPAとは、自社の敷地外にある発電所から再生可能エネルギーを長期契約で購入する仕組みです。この仕組みにより、電気代を安定させつつ、CO2削減などの環境対策にも貢献できます。
近年では、発電方法として「水上太陽光発電」が注目されています。これは、水面に浮かべたフロートの上に太陽光パネルを設置する発電方式で、使われなくなったため池などを活用できます。
シエル・テール・ジャパンは、業界で最も長い歴史を持つ水上太陽光のパイオニアとして、これまで蓄積された知見や経験により、信頼性の高いサービスを提供しております。14年以上にわたる経験をもとに、安全性を考慮したフロート作りとアンカー設計など、実運用に耐える高品質な設計・施工を実現しています。
EPCだけでなく、設備の運用管理を行うオペレーションやマネージメントまで、
数々の実績をもとに一貫して自社で行えるため、より納得のいく施工が可能です。
水上太陽光発電の導入をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。