オンサイトPPAとは、需要家の敷地内に発電事業者が発電設備を設置し、そこで発電された電力を需要家が購入するという契約方法です。本記事では導入のメリット・デメリット、導入の流れ、ほかの契約方法との違い、利用できる補助金について紹介します。
オンサイトPPAは、初期費用をかけずに太陽光発電などの再生可能エネルギーシステムを導入できる画期的なソリューションです。電力コストの削減だけでなく、環境負担低減にも貢献できるため、企業イメージの向上やESG投資を意識した外部アピールにつなげたいと考える方にとって最適な選択となるでしょう。
本記事では、契約した場合の利点と注意点、契約開始から利用するまでの流れ、類似点を持つほかの導入方法との違いについて詳しく紹介します。また、導入の際に利用可能な補助金についても紹介するので、検討する際の参考にしてください。

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オンサイトPPAとは?
「現場」または「現地」を意味するオンサイトと、Power Purchase Agreement(パワー・パーチェス・アグリーメント)を略した「電力購入契約」または「電力販売契約」を意味するPPAを組み合わせたものです。
オンサイトPPAでは、電力の購入者(需要家、つまり電力を必要とする自治体や企業など)の敷地のなかに、発電事業者が再エネシステムを設置します。そして、そこで発電された電力を需要家が購入するという契約形態です。
発電システムは事業者が所有するため、需要家はコストをかけることなくシステムを導入できます。また、維持管理にかかるコストや手間も、基本的には必要ありません。
敷地としては、一般的な屋上や遊休地に加え、ため池や調整池などの水上太陽光発電も選択肢になります。シエル・テール・ジャパンの水上太陽光発電所システムは、未活用のため池や調整池を有効活用し、電力コスト削減を実現します。
オンサイトPPA導入のメリット
ここでは、コスト面や運用面の観点から、オンサイトPPA導入で得られる利点を5つ解説します。
初期費用がかからない
システムの設置は事業者が行うため、需要家は導入にかかるコストが不要です。電力供給が始まってから導入にかかった費用を分割で返済したり、契約完了後にまとめて請求されたりすることもありません。
自社でシステムを設置する場合、かなりの初期費用がかかってしまうことを考えると、初期費用なしでシステムを導入できるのは大きなメリットといえるでしょう。
メンテナンス費用もかからない
自社でシステムを購入した場合、定期点検や故障時の修理など、継続的なメンテナンスが必要です。しかし、オンサイトPPAでは事業者がシステムを設置し、維持管理もすべて事業者が行います。
そのため、需要家は維持管理の手間も、それにともなう費用も不要です。維持管理の費用はシステムを使い続ける限り発生するため、この費用がかからないことは大きなメリットになります。また、万が一自然災害でシステムに破損が生じた場合でも、費用を負担する必要がないため、想定外の支出が発生する心配もありません。

電気料金を抑えられる
一般の電力会社の電気料金には、人件費などの経費、送配電コスト、そして再エネ賦課金などのさまざまな費用が含まれています。しかし、オンサイトPPAでは、需要家の敷地のなかで発電した電力を直接使用するため、送配電コストや再エネ賦課金がかかりません。一般的な電力会社に支払う電気料金に比べて割安になります。
たとえば、年間1,000万kWhの電力を購入する場合、電気料金が1kWhあたり2円下がるだけで、年間2,000万円の電気料金を削減できます。電気は企業の活動に不可欠であり、消費を減らすことには限界があるため、電気料金そのものが安くなることは非常に大きなメリットといえるでしょう。
再エネ賦課金が発生しない
再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社が買い取る費用の一部を、電気を使うすべての人が電気料金の一部として負担する制度です。
一般的な電力会社から電気を購入する場合「再エネ賦課金」が発生しますが、オンサイトPPAではシステムから直接電気を送るため、小売事業者や送配電事業者を挟みません。
再エネ賦課金が発生せず、その分電気料金が一般的な電力会社よりも安くなります。再エネ賦課金は年々上昇しており、今後も再エネの導入拡大にともない、上昇が続くことが予想されます。そのため、再エネ賦課金がかからないことは、長期的に見て大きなメリットになります。
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非常用電源として利用できる
一般的な電力会社で電気を購入している場合、自然災害などで送配電網にトラブルが発生すると停電してしまいます。しかし、オンサイトPPAの場合は敷地のなかにシステムがあるため、システムそのものが破損しない限り電力の利用が可能です。
地震、台風、豪雨など自然災害が起こりやすい日本において、災害時にも非常用電源として機能することは、事業継続の観点からも非常に大きなメリットです。
オンサイトPPA導入のデメリット・注意点
どんな制度にも利点だけでなく懸念点も存在するため、導入を検討する際はそれらも理解しておかなければいけません。ここでは、オンサイトPPAを利用するうえで考えられるデメリットや注意点を紹介します。
契約期間が15~25年と長い
システムの費用を需要家が支払う必要がない分、発電事業者は初期費用や維持費用を毎月の電気料金から回収する必要があります。そのため、一般的に契約期間が15〜25年と長くなる傾向があります。
もし、契約期間中に需要家の都合でシステムを処分する必要が生じても、所有権は発電事業者にあるため自由に処分はできません。また、処分した場合には発電事業者への違約金の支払いが発生してしまいます。
したがって、導入を検討する際は、長期間利用し続けられるかを十分に検討する必要があります。
契約終了後は設備運営のコストが自己負担になる
契約が終了すると、所有権が発電事業者から需要家に移ります。需要家は契約終了後もシステムを使い続けることができ、余剰電力の売電も可能です。これは一見メリットに思えますが、維持管理のコストが自己負担になるため、注意が必要です。
長期契約後もシステムを安全に使い続けるために、定期的な維持管理費用を考慮しておきましょう。発電事業者のなかには、契約終了後も維持管理を請け負ってくれるところもあるため、契約前に確認しておくことをおすすめします。
余剰電力を売却できない
システムが需要家の所有物であれば、余剰電力を売電できますが、オンサイトPPAの契約期間中の所有権は発電事業者にあるため、売電できません。そのため、システムの設置をコスト削減だけでなく、利益の創出を目的とする方にとってはデメリットとなるでしょう。
発電事業者の審査を受ける必要がある
導入には、システムが設置可能な場所であるか、そして十分な発電量が得られるかといった審査を受ける必要があります。また、契約期間が長期にわたるため、企業の経営状態も審査の対象となります。

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オンサイトPPAで電気を利用する際の流れ
オンサイトPPAで需要家が電気を利用する際の流れは次のとおりです。
- 発電事業者を選定し、契約を締結する。
- 事業者が需要家の施設内に発電設備を設置し、構内線や自営線で電気を利用する施設と接続する。
- 発電設備で発電された電気は、利用量に応じて発電事業者へ料金を支払う。電力が不足する場合は、一般の電力会社から購入する。
- 契約期間中の設備の運営管理やメンテナンスは、発電事業者が行う。
システムの設置費用や、電気の利用施設との構内線・自営線の設置費用は、すべて発電事業者が負担します。そのため、初期費用なしで導入可能です。
システムで発電された電力量より需要家の使用量が下回った場合、余った電力を売電する権利は発電事業者にあります。
オンサイトPPAとオフサイトPPAの違い
どちらの契約方法も、システム導入の費用や運営管理、維持管理費用がかからないこと、余剰電力を売電できないこと、そして契約期間中のシステムの処分や交換ができないという共通点があります。そのため、2つの契約方法は混同されやすいですが、もちろん違いも存在します。
両者の違いは、主に設置される場所、電気を供給する方法、そして発電の規模の3点です。それぞれの項目について詳しくみていきましょう。

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設置場所
オンサイトPPAでは、所有する敷地のなかの屋上や遊休地、ため池、調整池などの余剰スペースにシステムが設置されます。
一方、オフサイトPPAの場合は、敷地外にシステムが設置されます。敷地のなかにシステムを設置する余剰スペースのない需要家向きの契約方法です。
供給方法
オンサイトPPAでは、敷地のなかにあるシステムから、構内線や自営線を通じて直接供給されます。
一方、オフサイトPPAは敷地外にシステムが設置されるため、電力は一般の送電線から供給されます。送配電コストや再エネ賦課金の負担が必要になり、オンサイトPPAに比べて電気料金が高くなる傾向があります。
また、一般の送電線を利用していること、そしてシステムと利用場所が離れていることから、災害時に非常用電源として利用できない可能性があるため注意が必要です。
発電規模
オンサイトPPAは、敷地のなかにシステムを設置するため、利用可能な土地の制約から発電規模が小さくなる傾向があります。
一方、オフサイトPPAは敷地外にシステムを設置するため、広い土地を確保して大規模な発電が可能です。システムを設置するための広い土地の確保が難しいものの、多くの電力を利用したい場合にはオフサイトPPAを選ぶのがよいでしょう。
日本での主流はオンサイトPPA
2つの契約方法のうち、日本ではオンサイトPPAが主流となっています。その理由として、導入を検討する多くの需要家が、施設の屋根や遊休地といった既存の未活用スペースを有効活用したいと考えている点が挙げられます。
また、再エネの利用や電気料金のコスト削減といった課題に取り組みたい一方で、無理なくできる範囲で着手したいと考える傾向があることも、選ばれる理由のひとつです。
一方、オフサイトPPAは契約のハードルが高く導入が難しい傾向にあり、電気料金のコストカット率もオンサイトPPAに比べて低いため、実際に導入しているのは大企業が中心です。
こちらの記事では、オフサイトPPAについて詳しく解説しています。
メリットや補助金も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
オンサイトPPAと自己所有型の違い
需要家の施設内にシステムを設置して電気を利用する方法には、オンサイトPPAのほかに「自己所有型」という方法があります。これは、需要家が自ら購入・設置し、そこで発電した電力を利用する方法です。
自己所有型の場合、システム設置にかかる初期費用や運営管理費などは、すべて需要家が負担しなければなりません。また、自己所有となるため、償却資産税も発生します。
しかし、オンサイトPPAとは異なり、自己所有であるため電気料金は不要で、余った電力を売電することも可能です。さらに、好きなタイミングでシステムの処分、撤去、売却ができるといった自由度もあります。
自己所有型は、オンサイトPPAよりも電気代の削減率が高く、システムは減価償却が可能なため、経費として分散計上でき、節税効果も期待できます。一方、初期費用と運営管理費用といったコストがかかること、導入のための届け出や許認可などの手続きを自ら行わなければいけないことがデメリットといえるでしょう。

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オンサイトPPAとリースモデルの違い
初期費用を負担せずに敷地のなかにシステムを設置して電気を利用する方法には「リースモデル」もあります。リースモデルはオンサイトPPAと同様に、設置費用や維持管理費用が不要な点、契約期間が長期であること、そして契約期間中はシステムの処分ができないといった共通点があります。
2つの違いは、オンサイトPPAの場合は「利用する電気の量」に対して料金を支払い、リースモデルの場合は「システムを借りること」に対して料金を支払います。そのため、リースモデルの場合は別途電気料金がかからず、電力が余った際には売電も可能です。
毎月のコストについては、使った電気の分だけ支払うオンサイトPPAの方が安くなる傾向にあります。一方、リースモデルは固定のリース料金がかかる分高くなるでしょう。近年、売電収入は下落傾向にあるため、たとえ売電収入があったとしても、月々に支払う総額はリースモデルの方が高くなる可能性があります。
そのため、毎月かかるコストを抑えたいのであれば、オンサイトPPAを選ぶのがおすすめです。
オンサイトPPAで利用できる補助金制度
補助金制度には環境省が公募する「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」があります。また、東京都・神奈川県・宮城県には各自治体が公募する補助事業があります。
環境省:二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金
「二酸化炭素排出抑制対策事業等補助金」における、民間企業等による再エネの導入および地域共生加速化事業の対象は以下の5つです。
- ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
- 設置場所の特性に応じた再エネ導入・価格低減促進事業
- 離島の脱炭素化等推進事業
- 新手法による建物間融通モデル創出事業
- データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業
上記の事業のうち、1・4・5に関しては環境省の公式サイトに公募情報のサイトのリンクが掲載されています。ただし、現在(2025年7月時点)1と5の公募はすでに終了しています。
しかし、今後再度公募が開始される可能性はあるため、定期的に確認することをおすすめします。また、現在募集中の事業についても、予算額に達し次第終了となるため、申請は早めに行いましょう。
各自治体の補助事業
自治体の補助事業には、東京都の「地産地消型再エネ増強プロジェクト事業」と、神奈川県の「自家消費型太陽光発電等導入費補助」と、宮城県の「第三者所有モデル太陽光発電導入支援事業費補助金」の3種類があります。ただし、宮城県の令和7年度の公募はすでに終了しています。
東京都の補助事業は令和8年度 まで、神奈川県の補助金は令和8年2月27日 まで申請可能ですが、どちらも予算の上限額に達した時点で終了してしまうため、申請は早めに行いましょう。
出典:東京都「再エネ電源都外調達事業(都外PPA)」
出典:神奈川県「令和7年度神奈川県自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金」
まとめ
オンサイトPPAは、電力コストの削減や災害時の非常用電源としての活用など多くのメリットがあります。一方で、契約期間の長期化や売電制限といった注意点もあるため、導入前の十分な検討が必要です。
なかでも、オンサイトPPAで注目を集めているのが「水上太陽光発電」です。これは、ダム湖やため池などの水面に太陽光パネルを浮かべて設置する発電方法で、地上に広大な土地を確保する必要がありません。
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