太陽光発電の効率は約20%で、高効率パネルでは変換効率22%超を実現しています。効率低下の5つの要因と具体的な向上策、注目の水上設置による効率改善まで詳しく解説します。
太陽光発電の導入を検討する際、最も気になるのが「効率」の問題です。業者のシミュレーションと実際の発電量の差に疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、太陽光発電の効率を正しく理解し、長期的な投資対効果を最大化するための知識を紹介します。効率を左右する要因から最新技術まで、水上太陽光発電という新たな選択肢も含めて詳しく解説します。
太陽光発電の効率を示す数値|発電効率と変換効率
太陽光発電における「効率」には、発電効率と変換効率という2つの重要な指標があります。この違いを正しく理解することは、適切なシステム選択の第一歩となります。
発電効率
発電効率とは、太陽光発電システム全体が太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する際の総合的な効率を表します。設置環境、天候、方角、温度など、実際の運用状況におけるさまざまな外的要因の影響を受けるのが特徴です。
一般的な太陽光発電システムの発電効率は「約20%」とされています。つまり、100の太陽光エネルギーがあった場合、20の電気エネルギーに変換されるということです。
変換効率
変換効率は、太陽光パネルを構成するモジュールやセルが、理想的な条件下で太陽光を電気に変換する能力を示す指標です。実際の設置環境による影響を除いた、パネル本体の性能を表すものです。
モジュール変換効率
太陽光パネル(モジュール)1枚全体の変換効率を示します。計算式は以下のとおりです。
モジュール変換効率(%)=[モジュール公称最大出力(W)×100]÷[モジュール面積(㎡)×1,000(W/㎡)]
また、一般的なシリコン系パネルでは20%程度ですが、高効率パネルでは22%を超える製品も登場しています。
セル変換効率
太陽電池モジュールを構成する最小単位「セル」1枚当たりの変換効率です。
セル変換効率(%)=[モジュール公称最大出力(W)×100]÷[1セルの全面積(㎡)×1モジュールのセル数(個)×1,000(W/㎡)]
また、研究レベルでは40%を超える効率も達成されており、技術革新の指標として注目されています。
太陽光発電とほかの再生可能エネルギーの発電効率比較
再生可能エネルギーのなかで太陽光発電はどの程度の位置にあるのでしょうか。数値だけでなく、それぞれの特性も含めて比較検討することが重要です。
太陽光発電
太陽光発電の発電効率は約20%で、再生可能エネルギーのなかでは中位に位置します。発電コストは事業用で12.9円/kWh、住宅用で17.7円/kWh程度となっています。
なお、太陽電池の種類によって変換効率は大きく異なります。
こちらの記事では、太陽光発電の発電量について解説しています。
発電量の目安や計算方法も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
シリコン系
現在の市場の主流を占めるシリコン系太陽電池には、単結晶、多結晶、アモルファスの3種類があります。
単結晶シリコンが最も効率が高く、市販製品では22%を超える変換効率を実現している製品もあります。多結晶シリコンは15~18%程度、アモルファスシリコンは8~12%程度の変換効率となっています。
化合物系(CIS太陽電池)
銅(Copper)、インジウム(Indium)、セレン(Selenium)を使用したCIS太陽電池は、結晶シリコンとは異なる特性を持ちます。
変換効率は14~15%程度ですが、実発電量では結晶シリコンを上回るケースが報告されています。これは、部分的な影の影響を受けにくい特性や、温度特性のよさによるものです。
有機系
有機材料を使用した太陽電池で、軽量性と柔軟性が特徴です。現在の変換効率は10~15%程度と低めですが、製造コストの安さと加工しやすさから注目されています。
ペロブスカイト太陽電池
2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授が世界で初めて報告した、日本発の革新的な太陽電池技術です。ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池とは一線を画する特徴を持っています。
材料を基板に「塗る」だけという簡単な製造工程により、圧倒的な低コスト化が実現できます。また、フィルムのような薄い基板への加工が可能で、軽量化や曲面加工もできるため、建物の壁面や窓、さらには自動車の表面など、これまで設置が困難だった場所への応用も期待されています。
研究段階では、セルの変換効率で26.7%に匹敵する記録も達成されています。さらに注目すべきは、シリコンと組み合わせたタンデム型太陽電池で、30%を超える変換効率の実現が可能であることです。
市販製品としてはまだ10~12%程度ですが、今後の技術革新により大幅な効率向上が見込まれています。
地熱発電
地熱発電は、地殻内部のマグマの熱エネルギーを利用して発電する方式です。発電効率は約10%と比較的低いものの、天候に左右されることなく、24時間安定した発電が可能という大きな利点があります。発電コストは16.7円/kWh程度です。
日本は火山国であり、豊富な地熱資源を有していますが、温泉地との競合や環境アセスメントの課題により、開発が進んでいないのが現状です。
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風力発電
風の運動エネルギーを利用する風力発電の発電効率は20~40%で、理論上は60%近くまで到達可能とされています。しかし、風力は自然条件に大きく依存するため、発電の安定性に課題があります。発電コストは陸上風力で19.8円/kWh、洋上風力で30.0円/kWh程度です。
大型の風車設備が必要なため、設置可能な場所が限られ、騒音や景観への影響も考慮する必要があります。
水力発電
水力発電は再生可能エネルギーのなかで最も高い発電効率を誇り「約80%」に達します。水の位置エネルギーを利用するため、エネルギーの無駄が少なく、技術的にも成熟しています。発電コストは中水力で10.9円/kWh、小水力で25.3円/kWh程度です。
ただし、ダムの建設には巨額の投資が必要で、環境への影響も大きいため、新規開発は困難な状況です。また、降水量に依存するため、渇水時には発電できなくなるリスクもあります。
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バイオマス発電
生物由来の廃棄物や木質材料を燃焼させて発電するバイオマス発電の効率は約15~30%です。木質バイオマス発電では平均20%程度となります。発電コストは13.2~29.8円/kWh程度と幅があります。
燃料の安定調達や輸送コストが課題となり、とくに日本では燃料価格の高さが電力コストに影響しています。
太陽光発電の発電効率を下げてしまう要因
太陽光発電システムを導入しても、期待した発電量が得られない場合があります。その主な原因となる5つの要因について詳しく解説します。
天候・外気温
太陽光発電は太陽の光エネルギーを利用するため、天候による影響は避けられません。曇りや雨の日には日射量が減少し、発電量も大幅に低下します。とくに梅雨時期や冬季の日照時間が短い期間は、年間発電量に大きく影響します。
また、気温の上昇も発電効率の大敵です。太陽光パネルの表面温度が25℃を超えると発電効率が低下し始め、1℃上昇するごとに約0.4~0.5%の効率低下が生じます。真夏の炎天下では、パネル表面温度が70~80℃まで上昇することもあり、日射量は豊富でも発電効率は大幅に低下してしまいます。
水上太陽光発電は、水面からの蒸発による冷却効果により、パネル温度を低く保つことができます。これにより、夏季でも高い発電効率を維持し、年間を通じて安定した発電量を実現できます。
遮蔽物
太陽光パネルに影がかかると、その部分の発電は停止し、場合によってはシステム全体の発電量に影響することもあります。建物、樹木、電柱、アンテナなど、さまざまな物体が影の原因となります。
とくに注意すべきは、太陽の軌道が低くなる朝夕や冬季に発生する長い影です。設置時には問題なくても、周辺環境の変化(新しい建物の建設、樹木の成長など)により、後から影響が生じることもあります。
水上太陽光発電の設置場所は、田んぼやため池など建物や樹木による遮蔽が少ない開放的な場所です。これにより、朝から夕方まで安定した日射量を確保でき、影による発電量低下のリスクを軽減できます。
設置方位・角度
太陽光パネルの設置方位と角度は、発電効率に直接影響します。日本では真南向き、傾斜角30度が最適とされていますが、屋根の構造や周辺環境により理想的な設置ができない場合があります。
真南から東西にずれるほど発電効率は低下し、北向きの設置では発電量が大幅に減少してしまいます。また、傾斜角度も重要で、水平設置や急角度での設置は効率の低下を招きます。
水上太陽光発電は、水面という制約のない平面を活用できるため、理想的な方位と角度での設置が可能です。
表面の汚れ
太陽光パネルの表面に付着する汚れは、太陽光の吸収を阻害し、発電効率を低下させます。主な汚れの原因としては、鳥の糞、黄砂、花粉、落ち葉、塩分(海岸地域)、工場からの粉塵などがあります。
とくに鳥の糞は酸性が強く、パネル表面を損傷させる可能性もあるため、早急な除去が必要です。汚れの程度によっては、発電量が10~20%も低下することがあります。
経年劣化
太陽光パネルは時間の経過とともに徐々に劣化し、発電効率が低下していきます。劣化の速度は設置される環境や気象条件により異なりますが、年間0.27~0.5%の発電量低下が報告されています。
一般的には年間0.3~0.5%程度の劣化率と考えられており、20年間の使用で発電量が6~10%程度低下することになります。劣化の主な原因は、紫外線による材料の劣化、温度変化による熱応力、湿気の影響などです。
水上太陽光発電は、水面の冷却効果によりパネル温度が低く保たれるため、熱によるストレスが軽減され、経年劣化のスピードを抑制できます。
太陽光発電の発電効率を高める方法
効率低下の要因を理解したところで、実際に発電効率を最大化するための具体的な方法を見ていきましょう。
発電効率の高いパネルを選ぶ
パネル選択は発電効率を左右する最も重要な要素のひとつです。現在市販されている高効率パネルでは、変換効率が22%を超える製品も登場しています。カナディアンソーラー、パナソニック、Qセルズなどの主要メーカーが、それぞれ特徴的な高効率パネルを開発しています。
ただし、変換効率が高いパネルは一般的に価格も高くなるため、投資対効果を慎重に検討する必要があります。設置面積に制約がある場合は高効率パネルが有効ですが、十分な設置面積がある場合は、コストパフォーマンスを重視した選択も可能です。
設置環境に合ったシステムを採用する
地域の気候特性に応じたシステム選択も重要なポイントです。積雪地域では雪の滑落を考慮した角度設定や耐荷重設計が必要になります。海岸地域では塩害対策が施されたパネルや架台を選択する必要があります。
台風の多い地域では、風荷重に耐える強固な設置構造が求められます。これらの環境要因を事前に評価し、適切な仕様のシステムを採用することで、長期間にわたって安定した発電効率を維持できます。
方位と角度を調整する
理想的な設置条件は真南向き、傾斜角30度ですが、建物の構造上この条件を満たせない場合もあります。そのような場合でも、可能な限り最適な条件に近づけることで発電効率の向上が期待できます。
南東や南西向きであれば、発電効率の低下はある程度抑えられます。また、季節による太陽軌道の変化も考慮し、年間を通じて最も効率的な角度を選定することが重要です。
パネルの上に影がかからないようにする
影による発電量への影響は想像以上に大きく、部分的な影でもシステム全体の出力が低下することがあります。設置前の影の調査はもちろん、設置後も定期的に影の状況をチェックし、必要に応じて樹木の剪定などの対策を講じることが重要です。
水上太陽光発電で遮蔽物や温度の問題を解消!
近年、注目を集めているのが「水上太陽光発電」です。水上太陽光発電所とは、農業用ため池や貯水池などに設置された太陽光発電所のことで、太陽光パネルを水面に浮かべます。
水面は広大で平坦なため、陸上のような建物や樹木による遮蔽物の影響を受けにくく、最適な日照条件を確保しやすいという大きなメリットがあります。
また、水上設置では水面からの冷却効果があり、パネル温度の上昇を抑制することで、とくに夏季の発電効率低下を軽減する可能性があります。
水上太陽光発電のパイオニアであるシエル・テール・ジャパンは、世界で初めて水上太陽光用架台システムを展開し、長年の経験により高レベルなエンジニアリング技術を誇っています。
安全性を考慮したフロート作りとアンカー設計により、日本で唯一大型パネルに対応した水上架台フロート開発に成功しています。設計から施工だけでなくO&M業務を徹底し、さまざまな独自のメンテナンスプログラムを行っています。
まとめ
太陽光発電の効率は、パネルの性能だけでなく、設置環境や運用方法によって大きく左右されます。発電効率約20%という数値は、再生可能エネルギーのなかでは標準的な水準です。重要なのは、効率を阻害する要因を事前に把握し、適切な対策を講じることです。
とくに企業として太陽光発電を導入する際は、電気代削減と環境性能向上の両立、そして将来的な入札案件での競争力強化を見据えた戦略的な選択が求められます。
また、水上太陽光発電は、森林を伐採する必要がなく、これまで活用されていなかった水面を有効利用できる点が大きな特徴です。とくに適地の確保が難しい日本においては、新たな設置場所の選択肢として大きな可能性を広げます。
シエル・テール・ジャパンは、環境に配慮しつつ効率的な水上太陽光発電システムの導入を専門に行っています。豊富な実績と技術力をもとに最適なソリューションを提案し、再生可能エネルギーの普及とSDGsの達成に貢献します。
水上太陽光発電をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
シエル・テール・ジャパンでは、水上太陽光発電に関するサービスを提供しています。
工事やメンテナンスなど、お困りの際にはぜひお問い合わせください。
BY MIKU, SALES & MARKETING, CIEL TERRE JAPAN