水上太陽光発電は水上に太陽光パネルを設置し発電する方法です。発電効率を維持しやすい、設置可能な場所が多いなどのメリットがある一方で、施工できる業者が少ないといったデメリットも存在します。ため池に設置する際のポイントについても解説します。
本記事では、概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。ため池を有効活用したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
水上太陽光発電とは
水上太陽光発電は、水上に太陽光パネルを設置し発電する方法です。太陽光パネルの設置場所として一般的に知られるのは、土地や屋根の上などが挙げられますが、近年ではさまざまな場所にパネルが設置できるようになりました。外壁やカーポートといった場所に設置する方法もあり、そのうちのひとつが水上太陽光発電です。
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Komo Ike, 0.8MWp
水上太陽光発電はため池のほか、ダムや湖などの水上にも設置可能です。直接水上にパネルを設置すると、浮力や感電などの問題が生じるため「フロート架台」と呼ばれる浮きのような架台を水上に浮かべ、架台の上にパネルを設置します。
また、フロートが流されないよう「アンカー」と呼ばれる錨のようなものを使用し水底から固定するため、水没や感電、流されてしまうといった問題が生じることを防ぎます。
シエル・テールは、業界で最も長い歴史を持つ水上太陽光のパイオニアとして、最適にカスタマイズされたアンカリングデザインから実際のアンカー打設作業まで、責任をもって担います。
また、設置後のアンカリングメンテナンスまで十全にサポートするため、 2023年よりO&Mのサービスも拡大しております。赤外線ドローン撮影やアンカーシステムの点検をはじめとした、さまざまなメンテナンスプログラムをご提供し、お客様のお力になれるよう維持管理に努めています。
水上太陽光発電のメリット
水上太陽光発電をため池に設置するメリットは、主に以下の6つが挙げられます。
- 発電効率を維持しやすくなる
- 設置可能な場所が多くある
- 障害物を気にせずに設置できる
- ため池を有効活用できる
- 土地の造成工事をせずに設置できる
- 水質の悪化を防げる可能性がある
設置場所の特性から、陸上とは異なるさまざまなメリットを持っています。以下では、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
発電効率を維持しやすくなる
陸上に太陽光パネルを設置すると、季節や設置環境によっては発電効率に影響を及ぼすことがあります。発電効率において、パネルの表面温度は大きく関係しており、最も効率的に発電できるパネルの適温は25度です。
25度という数字は、外気温ではなくパネルの表面温度です。そのため、日光が最大限に当たるよう設置されている太陽光パネルは、冬場でも熱くなりやすい環境に置かれており、本来の発電効率を発揮できないことが多くあります。
対して、水上は陸上よりも温度が低い傾向にあります。そのため、水上に設置する水上太陽発電は、パネルの温度上昇を抑えられます。パネルの温度は発電効率の維持に大きく貢献するため、効率的に発電したいとお考えの方におすすめです。
設置可能な場所が多くある
水上太陽光発電の設置可能場所は、ため池のほか、ダム、湖、河川など数多く、陸上よりも柔軟です。水上が利用できるため、土地か不足している地域にも設置可能です。
Alto Rabagao, 218 kWp
太陽光パネルの設置にはいくつか条件があるため、とくに土地が限られた都市部では陸上パネルの設置場所を見つけることは困難です。しかし、水上太陽光発電なら、ため池やダム、湖などさまざまな水域が活用できます。
農林水産省によると、ため池は全国で約15万か所存在します。 日本国内に数多く存在するため池を再生可能エネルギーの源として上手く活用できれば、自国発電量の増加にもつなげられるでしょう。
出典:農林水産省ウェブサイト
RUMSL Omkareshwar, 119.7MWp
障害物を気にせずに設置できる
太陽光パネルは設置場所によって、発電量が大きく左右されます。たとえば、屋根に太陽光発電を設置した住宅の隣に背の高いマンションが建つと、パネルに上手く光が当たらず発電量が減少します。
陸上の場合、建物のほか、樹木の成長や電線、アンテナ、洗濯物などさまざまなものが障害物となり得ます。
ため池を有効活用できる
ため池は、主に農業用水を確保するために水を貯え、取水施設を備えた人工池です。降水量が少なく、大きな河川に恵まれない地域でも安定して農業ができるよう、古くから作られてきました。
ため池は農業用水のほかにも、防災や地域住民の憩いの場などとして活用されていますが、農家戸数の減少や土地利用の変化などから、適切な管理が難しくなっています。
老朽化や自然災害により修繕・復旧が必要な場合にも、資金不足などが課題となり、スムーズな修繕・復旧が進んでいない地域もあります。
ため池は地域の農業や生態系を支える重要なインフラですが、現状のままでは機能が損なわれてしまう恐れがあるため、多面的機能の活用が必要です。水上太陽光発電は多面的機能の活用方法のひとつで、電力を売却すればため池の維持管理費用への充当も可能です。
土地の造成工事をせずに設置できる
陸上にパネルを設置する場合、設置場所によっては森林の伐採や除草作業といった造成工事が必要です。対して、ため池にパネルを設置する場合、フロートやアンカーの設置といった作業が必要なものの、土地の造成工事は行う必要がありません。そのため、初期費用の負担を軽減できます。
初期費用を抑えたい場合や、近隣住民による造成工事の反対が懸念される場合は、水上太陽光発電の設置がおすすめです。
水質の悪化を防げる可能性がある
ため池に設置するメリットのひとつに、水質悪化の防止が挙げられます。植物性プランクトンのアオコは、水の流れが滞っているため池のような場所に発生しやすいです。
アオコが大量発生すると、水面を緑色に染めてしまうだけでなく、カビのような嫌な臭いを放ちます。また、発生原因には水温の上昇も考えられています。
水上太陽光発電を設置すると、直接的な日射を遮り水温の上昇を抑制する効果が期待できるため、プランクトンの発生が抑えられる可能性があります。
水上太陽光発電のデメリット
水上太陽光発電にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。主なデメリットは、以下の2点です。
- 施工できる業者が少ない
- メンテナンスが難しい
デメリットを理解したうえで、設置の検討が必要です。以下では、デメリットを詳しく解説するとともに、最小限に抑えるためのポイントも解説します。
施工できる業者が少ない
水上太陽光発電は水上にパネルを設置するため、浮体構造や固定方法など、陸上とは異なる専門的な知識が必要です。
また、水生生物や水質への影響を考慮した設計・施工が必要です。水上工事にはさまざまな法規制が適用されるため 、陸上に比べ施工できる業者がまだ少なく、実績も多くはないのが現状です。そのため、比較的工期が長くなる傾向にあります。
メンテナンスが難しい
水上太陽光発電は、メンテナンスの際にボートに乗って設置箇所まで向かったり、潜水したりする必要があります。水上にあるがゆえに、陸上と比べてメンテナンスが大がかりになることが多く、その分手間やコストもかかります。
設置場所によっては、塩害や潮汐などの影響を受けることもあり、陸上より定期的なメンテナンスが必要になることもあるため、その点も考慮したうえで設置しなければなりません。
メンテナンスを怠ると、発電効率の低下やシステムの寿命が縮む可能性があります。IoT技術を活用した遠隔監視システムの導入や、専門業者との点検契約など、メンテナンスが負担にならないような方法を検討してから設置しましょう。
シエル・テールは、お客様の水上太陽光発電所を健全に維持するための保守点検を担います。
スポット点検または定期点検、どちらも水上太陽光発電に特化しており、これまでの実績に基づいた信頼性の高いサービスを提供します。
ため池に設置する際のポイント
ため池に水上太陽光発電を設置する際には、自然災害や水位変動の対応をあらかじめ考えておく必要があります。これらのリスクを考慮しておくことで、万が一の事態に適切な対策を講じられるためです。
自ら考えるだけでなく、施工業者や専門業者と連携し、地域の特性に合わせた設計・施工を行いましょう。以下では、設置する際のポイントを解説します。
自然災害への対策を講じる
地震や津波、台風、洪水などさまざまな自然災害発生リスクのある日本では、何をするにも自然災害への対策を講じることが大切です。
とくに、水上太陽光発電は水の上にパネルを浮かべて発電するため、地震による揺れや台風による風だけでなく、水への対策も必要です。
水力発電や水上太陽光発電など、電気と水は相性のよさを持つ一方で、感電や漏電、機械の故障など相性が悪い一面もあります。感電や漏電は命に関わる危険性もあるため、十分な知識と対策が求められます。災害対策を含めたノウハウを持つ施工業者・専門業者に相談しましょう。
発電効率の管理を徹底する
ため池での水上太陽光発電では、水位の変動と日光の位置関係による発電効率の低下に対策を練る必要があります。
ため池は降水量や蒸発、地下水などの関係により、水位が上昇することもあれば低下することもあり、常に変動します。また、季節により太陽の位置も変動するため、日光の角度が変わることで発電効率が低下する可能性もあります。
特殊な管理が必要となるため、O&Mを任せられる専門の業者に依頼し、発電効率を下げないよう管理を徹底することが重要です。
シエル・テール・ジャパンは、水上太陽光発電における信頼性の高いソリューションとスマートなサービスを提供しています。O&M業務もお任せいただけます。
ぜひ、お問合せください。
まとめ
水の上に設置する水上太陽光発電はため池をはじめ、ダムや河川などさまざまな場所に設置可能です。ため池に設置する場合は、農業用水や防災といった本来の機能を維持しつつ、再生可能エネルギー源を確保できます。遊休池だけでなく、現在も機能しつづけているため池の活用法としても最適です。
また、陸上に比べて、発電効率を維持しやすい、設置可能場所が多いなどのメリットがあります。一方で、陸上太陽光発電ほどメジャーではないため、施工業者がまだ少ないなどのデメリットもあります。
シエル・テール・ジャパンは、持続可能な世界のために、水上太陽光を世界中で不可欠なエネルギー源にすることを目指し、日本で唯一大型パネルに対応した水上架台フロートに成功しました。
水上太陽光発電のパイオニアとしてグローバルに活動し、製品・アンカー・プロジェクト設計における強力な研究開発能力で、信頼性と耐久性に優れた水上太陽光ソリューションを提供しています。
設計から施工だけでなくO&M業務徹底し、さまざまな独自のメンテナンスプログラムメニューを行っています。水上太陽光発電プロジェクトをご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。