脱炭素経営での太陽光発電は、CO2排出量を10分の1以下に削減し、エネルギーコスト削減も実現できます。導入方法、メリット・デメリット、水上設置という新たな選択肢まで詳しく解説します
脱炭素社会への移行が加速するなか、多くの企業にとって「脱炭素経営」は避けて通れないテーマとなっています。その第一歩として注目されているのが、再生可能エネルギーの代表格である「太陽光発電」です。
とくに土地の確保が難しい日本では、未利用の水面を活用できる「水上太陽光発電」という新しい選択肢が広がりつつあります。
本記事では、太陽光発電を活用した脱炭素経営のメリット、具体的な活用法、導入時の注意点を解説します。
脱炭素経営とは?
脱炭素経営とは、環境省が定義する「気候変動対策の視点を織り込んだ企業経営」を指します。つまり、単なる環境配慮ではなく、温室効果ガス排出量の削減を経営戦略の中核に位置づけ、持続可能で競争力のある企業へと変革する取り組みです。
具体的には、企業活動による温室効果ガス排出量を測定・分析し、2050年カーボンニュートラル達成に向けた削減目標を設定します。そして再生可能エネルギーの導入、エネルギー効率の改善、サプライチェーン全体での脱炭素化を通じて、その目標を実現していく経営手法といえるでしょう。
従来の環境経営が幅広い環境課題を扱うのに対し、脱炭素経営は温室効果ガス削減に特化している点が特徴的です。
脱炭素経営が重視される背景
脱炭素経営への関心が高まっている背景には、大きく2つの要因があります。
ひとつ目は、気候変動による物理的リスクの拡大です。
猛暑や豪雨、台風といった異常気象は、工場の操業停止や物流網の寸断を招き、企業の収益性に直接影響を与えています。このような気候関連リスクへの対処として、脱炭素経営が注目されています。
2つ目は、投資家や取引先からの要請の強まりです。
ESG投資の拡大により、環境への取り組みが企業価値に直結するようになりました。また、RE100やSBTといった国際イニシアティブに参加する企業が、サプライチェーン全体に脱炭素を求める動きも活発化しています。
さらに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応として、気候関連リスクと機会の財務的影響を開示する企業も増加しています。
脱炭素経営は、もはやコスト要因ではなく、競争優位性を左右する戦略的投資として捉えられています。
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企業が脱炭素経営にシフトするメリット
脱炭素経営への転換は、環境貢献だけでなく、企業の競争力強化と持続的成長に多面的なメリットをもたらします。
エネルギーコストを削減できる
再生可能エネルギーの導入により、化石燃料由来の電力への依存を減らすことができます。とくに太陽光発電の自家消費は、電力料金の基本料金削減に加え、燃料費調整額や再エネ賦課金といった変動費の影響を受けにくくなります。
近年の電力価格高騰を考えると、長期的には大幅なコスト削減効果が期待できるでしょう。PPA(Power Purchase Agreement)方式を活用すれば、初期投資を抑えながらエネルギーコストの安定化も実現可能です。
ESG投資の対象になりうる
ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する機関投資家からの評価向上により、資金調達の円滑化が期待できます。とくに「E(環境)」の取り組みとして脱炭素経営は高く評価され、低利での融資や投資を受けやすくなります。
金融機関も脱炭素支援を強化しており、グリーンファイナンスなど優遇金利での資金調達機会も拡大しています。
こちらの記事では、ESG投資と太陽光発電の相性について解説しています。
導入のメリットや注意点も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
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企業イメージアップにつながる
脱炭素への取り組みは、単なる環境施策にとどまらず、企業のCSR(企業の社会的責任)活動として高く評価されます。環境意識の高い消費者や取引先からの信頼獲得につながり、ブランド価値の向上が期待できます。
とくに建設業界では、発注者から「環境配慮型企業」としての評価を受けることで、競争入札での優位性確保や新規取引先の開拓にも有利に働きます。
ビジネス機会を創出できる
サプライチェーン全体での脱炭素化要請が強まるなか、脱炭素経営に先行投資する企業は新たなビジネスチャンスを掴むことができます。Appleやトヨタなど大手企業が取引先に脱炭素化を求める事例も増えており、対応の有無が受注機会に直結しています。
また、脱炭素技術や環境配慮型工法の開発により、新市場での競争優位性確保も可能になります。
脱炭素経営に取り組むうえでのデメリット・課題
脱炭素経営には多くのメリットがある一方で、現実的な課題も存在します。これらの課題を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
初期費用や維持費などのコストがかかる
再生可能エネルギー設備の導入には、まとまった初期投資が必要です。さらに、長期的に安定稼働させるためには、定期点検・清掃・部品交換といった維持管理コストも発生します。
しかし、PPA方式やリース契約を活用すれば初期費用負担を大幅に軽減でき、国や自治体の補助金制度、税制優遇措置との組み合わせで実質的な投資負担を抑えることも可能です。
従業員やステークホルダーからの理解が必要になる
脱炭素経営の推進には、社内外の関係者への丁寧な説明と合意形成が欠かせません。とくに再生可能エネルギーへの切り替えは、電力供給の安定性に対する懸念を生む場合があります。
まずは脱炭素経営のビジネスメリットを具体的な数値で示し、段階的な導入計画を提示することで、理解と協力を得ることが重要です。
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脱炭素経営の取り組みで太陽光発電が注目されている
数ある再生可能エネルギーのなかでも、太陽光発電が注目される理由は「導入しやすさ」と「実用性」にあります。
太陽光発電は発電時にCO2をほとんど排出しないクリーンなエネルギーであり、日本の気候条件においても安定した発電が期待できます。また、設備の小型化から大型化まで柔軟に対応でき、企業規模や予算に合わせた導入が可能です。
さらに、政府のエネルギー基本計画では、2040年度の電源構成における太陽光発電の比率を23~29%程度まで引き上げる目標が設定されており、制度面での後押しも充実しています。
こうした背景から、脱炭素経営の実現手段として太陽光発電への期待が高まっているのです。
太陽光発電のメリット
脱炭素経営の実現手段として太陽光発電を導入することで、企業は多方面にわたってメリットを得られます。ここでは、太陽光発電のメリットについて解説します。
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CO2排出量が少ない
太陽光発電の最大の特長は、発電時にCO2をほとんど排出しないことです。化石燃料を燃やす火力発電と比較すると、1kWhあたりのCO2排出量を約10分の1以下に抑えることができ、脱炭素経営の中核となるクリーンなエネルギー源として機能します。
こちらの記事では、カーボンニュートラル実現について解説しています。
太陽光発電との関係性やメリットも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
余った土地を有効活用できる
太陽光発電は設置場所の自由度が高く、建物の屋上、遊休地、駐車場など、さまざまなスペースを有効活用できます。とくに工場や倉庫など広い屋根面積を持つ施設では、大容量の発電システムの設置が可能です。
設置する場所の広さに応じて自由に規模を決められるため、段階的な拡張も容易です。また、投資リスクを分散しながら、将来の電力需要増加に対応することもできます。
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水上にも設置可能!水上太陽光発電の可能性
用地確保の課題を解決する革新的なソリューションとして「水上太陽光発電」が注目されています。水上太陽光発電は、ダムやため池、調整池といった水面を利用して太陽光パネルを設置する方法です。
水上太陽光発電の特長は、単なる設置場所の多様化にとどまりません。水の冷却効果により、発電効率向上が期待できます。また、水面への設置により水の蒸発を抑制し、藻類の異常発生を防ぐ環境メリットも確認されています。
森林伐採や農地転用といった環境負荷がなく、大規模発電が実現できる点は、持続可能な経営を目指す企業にとって理想的な選択肢といえるでしょう。
シエル・テール・ジャパンは、水上太陽光発電のパイオニアとして、世界初の水上太陽光用架台システムを開発しました。長年にわたる豊富な経験と高レベルなエンジニアリング技術を誇り、世界各地で数々のプロジェクトを成功させています。
非常用電源として活用できる
太陽光発電システムは、停電時にも電力供給を継続できる自立運転機能を備えています。蓄電池と組み合わせることで、夜間や悪天候時でも安定した電力確保が可能になります。
近年多発する自然災害や電力不足のリスクを考えると、BCP(事業継続計画)の観点からも太陽光発電の導入価値は高まっています。工場の安全な停止作業や重要データのバックアップ確保、空調設備の最低限の稼働など、事業継続に必要な電力を確保できます。
売電収入を得られる
発電した電力のうち、自家消費しきれなかった余剰分は電力会社に売電することで収入を得られます。FIP(上乗せ価格買取制度)を活用すれば、長期間にわたって安定した売電収入が見込めます。
売電収入は設備投資の回収を早め、脱炭素経営の経済性を高める重要な要素となります。とくに大規模な水上太陽光発電では、規模が大きいほど効率よく発電でき、投資回収効果も高まります。
太陽光発電のデメリット
太陽光発電の導入を検討する際は、メリットだけでなくデメリットも正しく理解しておくことが重要です。ここでは、太陽光発電のデメリットについて解説します。
景観トラブルや反射光トラブルを起こす可能性がある
大規模な太陽光発電設備の設置は、景観への影響や太陽光パネルからの反射光による近隣トラブルのリスクをともないます。特に住宅地や観光地に近い場所では、地域住民との十分な協議が必要になります。
水上太陽光発電では、水面とほぼ平行に設置することで景観への配慮を行い、反射光の影響も最小限に抑える設計が可能です。
発電量が天候や時間に左右される
太陽光発電は天候や時間帯によって発電量が大きく変動します。曇りや雨の日は発電量が減少し、夜間は発電できません。また、降雪地域では冬期の発電量低下も考慮する必要があります。
この課題に対しては、蓄電池システムとの併用が有効な解決策となります。昼間に発電した電力を蓄電池に貯め、夜間や悪天候時に活用することで、安定した電力供給を実現できます。
また、水上太陽光発電では、水面からの冷却効果により発電効率の向上が期待できます。 高温時の発電量低下を抑制し、より安定した電力供給を実現します。
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定期的なメンテナンスが必要になる
太陽光発電システムの長期安定稼働のためには、定期的な点検・清掃・部品交換が欠かせません。特にパネルの汚れは発電効率低下の直接要因となるため、適切なメンテナンス計画が重要です。
シエル・テール・ジャパンでは、設計・施工から保守管理(O&M)まで一貫したサービスを提供しており、お客様は長期にわたって安心してシステムを運用いただけます。豊富な実績にもとづく信頼性の高い保守管理サービスにより、システムの稼働率向上と維持費の適正化を実現しています。
脱炭素経営で太陽光発電を活用する方法
企業が太陽光発電を導入する方法は多様化しており、それぞれの事業規模や資金状況に応じた最適な手法を選択できます。ここでは、脱炭素経営で太陽光発電を活用する方法について解説します。
自社の敷地内に太陽光発電設備を導入する
自社の敷地内に太陽光発電設備を導入する際は、購入・リース・オンサイトPPAの3方式から選択できます。
自社の敷地外に太陽光発電設備を導入する
自社の敷地外に太陽光発電設備を導入する際は、自営線・自己託送・オフサイトPPAの3方式から選択できます。
再生可能エネルギーを活用した電力プランに切り替える
最も手軽な脱炭素への取り組みとして、再生可能エネルギー由来の電力プランへの切り替えがあります。設備投資不要で、契約変更のみで脱炭素化を進められます。
ただし、電力料金が割高になる場合があり、また供給者の再エネ比率や調達方法を十分確認する必要があります。
再エネ電力証書を購入する
再エネ電力証書(グリーン電力証書、Jクレジットなど)の購入により、間接的に再生可能エネルギーの環境価値を調達する方法です。物理的な電力は従来どおりですが、CO2削減効果を計上できます。
短期的な脱炭素目標達成には有効ですが、根本的な脱炭素化のためには、やはり自社での再生可能エネルギー導入が求められます。
太陽光発電導入の際に押さえておくべきポイント
太陽光発電の導入を成功させるためには、事前の検討と計画が重要です。以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
導入の目的
脱炭素、コスト削減、BCP対策など、導入の目的を明確にすることで、最適なシステム構成や運用方法を選択できます。複数の目的がある場合は、優先順位を決めて設計に反映させることが重要です。
目的が明確になれば、投資回収期間やシステム規模、必要な付帯設備も具体的に検討できるようになります。
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太陽光パネルの設置場所
設置場所の選定は、太陽光発電の成功を左右する最重要ポイントです。日射量、周辺環境、法的制約、アクセス性などを総合的に評価する必要があります。
なお、水上太陽光発電では、ため池や調整池を活用することで新たな用地確保が不要となり、水面からの冷却効果や日陰の影響が少ない環境により安定した発電が可能です。
システムの運用方針・方法
発電効率を長期にわたって維持するためには、適切な運用方針の策定が不可欠です。定期的な清掃、点検スケジュール、故障時の対応手順などを事前に整備しておく必要があります。
導入効果を最大化するためには「投資回収」「省エネ効果」「設備の安全性」といった観点を踏まえ、自社に適した運用方針を設計することが欠かせません。
税制優遇や補助金の制度
太陽光発電の導入には、国や自治体によるさまざまな支援制度が用意されています。中小企業経営強化税制による即時償却や税額控除、環境省の補助金事業など、初期費用負担を大幅に軽減できる制度を活用しましょう。
これらの制度は年度ごとに内容や予算が変わるため、導入計画の早期段階で最新情報を確認し、申請スケジュールを組み込むことが重要です。
まとめ
地球環境を守りつつ持続的に成長していくために、これからの企業活動では脱炭素経営を意識することが重要です。そのなかで、導入のしやすさと実効性を兼ね備えた太陽光発電は、最初の一歩に最適な選択肢です。
自社敷地での発電から、未利用水面を活用した水上太陽光まで、規模やニーズに応じた導入方法は多様化しています。CO2排出量の削減に加え、エネルギーコスト削減や非常用電源としての活用、さらには売電収入による投資回収など、多面的なメリットが期待できます。
水上太陽光発電のパイオニアであるシエル・テール・ジャパンは、製品の開発からEPC施工、長期的なO&Mまで、お客様の水上太陽光発電プロジェクトを成功に導くためのフルサポートを提供します。
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